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通信経路を隠すとはどういうことか

IPアドレスや通信経路の見え方を変えることの意味と限界を整理します。

匿名性の話では、「通信経路を隠す」「を隠す」という表現がよく出てきます。

しかし、通信経路を隠すとは、すべての相手からすべての情報を消すことではありません。

多くの場合、それは「接続先から見えるアクセス元」や「途中の相手から見える接続先」を変えることを意味します。 つまり、誰に何が見えるかを変える行為です。

この記事では、通信経路を隠すとは何を変えることなのか、何が残るのか、どの相手を信頼することになるのかを整理します。

通常の通信では何が見えるのか

通常、Webサイトへアクセスすると、あなたの端末は回線やISPのネットワークを通って接続先サーバーへ通信します。

接続先Webサイトには、アクセス元IPアドレスが見えます。 ISPや通信経路上の機器には、接続先IPアドレス、通信時刻、通信量などが見えます。

HTTPSが使われていれば、ページ本文やフォーム入力内容などは通信途中で読まれにくくなります。 しかし、通信の存在そのものや、接続先IPアドレス、通信量、タイミングまで消えるわけではありません。

相手見える可能性がある情報
接続先Webサイトアクセス元IPアドレス、、ログイン状態、リクエスト内容
ISP・通信事業者接続先IPアドレス、通信量、通信時刻
DNSリゾルバ問い合わせたドメイン名、問い合わせ時刻
同じネットワークの管理者接続先、通信量、端末情報など

通信経路を隠す技術は、この見え方を変えるために使われます。

通信経路を隠すとは見え方を変えること

通信経路を隠すとは、主に接続元と接続先の関係を直接見えにくくすることです。

たとえばを使うと、接続先Webサイトからは自宅IPではなくVPNサーバーのIPアドレスに見えます。 ISPから見ると、利用者がVPNサーバーへ接続していることは見えますが、その先のWebサイトまでは直接見えにくくなります。

を使うと、接続先WebサイトからはTor出口ノードのIPアドレスに見えます。 ISPからはTorネットワークへ接続していることが見えます。

つまり、通信経路を隠すとは、情報を完全に消すのではなく、見える相手と見える情報を変えることです。

VPNで経路を変える

VPNは、端末からVPNサーバーまでの通信路を作り、そのVPNサーバーを経由して外部へ通信する仕組みです。

接続先Webサイトから見ると、利用者の自宅や職場のIPアドレスではなく、VPNサーバーのIPアドレスからアクセスしているように見えます。

一方で、VPN事業者は利用者の接続に関する情報を扱います。

相手見え方
接続先WebサイトVPNサーバーのIPアドレスから来たように見える
ISPVPNサーバーへ接続していることが見える
VPN事業者利用者の接続元や接続先に関する情報を扱う
利用者のブラウザCookieやログイン状態は別問題として残る

VPNは、接続先から自宅IPを見えにくくする用途で有効です。 しかし、VPN事業者を信頼する必要があります。

Torで経路を分散する

Torは、複数の中継ノードを通して通信することで、接続元と接続先を直接結びつけにくくする仕組みです。

通常、Torでは通信が複数のノードを通ります。 接続先Webサイトからは、利用者本人のIPアドレスではなく、Tor出口ノードのIPアドレスに見えます。

TorはVPNとは信頼モデルが異なります。 単一のVPN事業者に通信経路を集めるのではなく、複数のノードに役割を分けます。

ただし、Torも万能ではありません。 実名アカウントにログインすれば、接続元IPが見えにくくてもアカウントで結びつきます。 Tor Browser以外の通信が外へ出ていれば、別の経路から情報が漏れます。

Tor、VPN、プロキシの具体的な違いは、別の記事で詳しく扱います。

プロキシで接続先を変える

プロキシは、利用者の代わりに接続先へアクセスする中継サーバーです。

プロキシを使うと、接続先WebサイトからはプロキシサーバーのIPアドレスに見えます。

ただし、プロキシは種類が多く、信頼性や暗号化の扱いもさまざまです。 ブラウザだけがプロキシを使っていて、他のアプリは通常の回線から通信することがあります。

また、プロキシ運営者は通信に関する情報を扱います。

プロキシは、用途によっては便利ですが、匿名性のために使う場合は信頼モデルを慎重に考える必要があります。

隠れるものと残るもの

通信経路を隠す仕組みを使っても、すべてが隠れるわけではありません。

情報隠れやすくなる場合残る場合
自宅IPアドレスVPN、Tor、プロキシ経由で接続先から見えにくくなるVPN事業者や入口側には見える
接続先ドメインISPから見えにくくなるDNS設定や接続先サービス側には残る
通信内容HTTPSやTLSで保護される接続先サーバーには届く
Cookie経路変更では消えない同じブラウザなら送信される
ログイン状態経路変更では消えないアカウントに行動が結びつく
通信量・時刻完全には消えない経路上の相手が観測できる

通信経路を隠すことは、匿名性の一部です。 しかし、Cookie、ログイン状態、ブラウザ情報、投稿内容、時間、過去情報は別に考える必要があります。

信頼先が変わる

通信経路を隠すと、信頼先が変わります。

通常接続では、ISPや接続先サービスに見える情報があります。 VPNを使うと、接続先から見えるIPは変わりますが、VPN事業者を信頼する必要があります。 Torを使うと、単一のVPN事業者とは違う構造になりますが、Tor Browserの正しい使い方や出口ノードの性質を理解する必要があります。

匿名性では、「このツールは安全か」だけではなく、「誰に何が見える設計なのか」を見る必要があります。

方法信頼先注意点
通常接続ISP、接続先サービス自宅や職場のIPが見える場合がある
VPNVPN事業者ログ方針や運営を信頼する必要がある
TorTorの設計、利用者側の運用ログインやブラウザ分離を誤ると相関される
プロキシプロキシ運営者種類や設定によって保護範囲が違う

通信経路を隠すとは、信頼の置き場所を変えることでもあります。

まとめ

通信経路を隠すとは、すべての情報を消すことではありません。

接続先から見えるIPアドレスを変えたり、ISPから接続先を直接見えにくくしたり、接続元と接続先の関係を結びつけにくくしたりすることです。

VPN、Tor、プロキシは、それぞれ通信経路の見え方を変えます。 しかし、Cookie、ログイン状態、ブラウザ情報、投稿内容、通信量、時刻、過去情報は別の問題として残ります。

匿名性を考えるときは、通信経路を隠すことを過大評価しないことが重要です。

誰から何を隠し、誰を信頼することになるのかを分けて考える必要があります。

関連ツール

Public IP Check

WhatIsMyIP

WhatIsMyIPは、Webサイト側から見える現在のパブリックIPアドレスを確認できる検証サイトです。

紹介する理由: VPNやTorなどを使ったあと、接続先から見えるIPアドレスが意図した経路のものに変わっているかを確認する入口になるためです。

URL : https://www.whatismyip.com/

外部サイトを開く
Anonymous communication

Tor Project

Tor Projectは、Tor BrowserとTorネットワークを開発・公開している公式プロジェクトです。

紹介する理由: Torは通信経路を隠す仕組みを学ぶ中心的な実例です。公式サイトでは、Tor Browserの入手、仕組み、利用上の注意を確認できます。

URL : https://www.torproject.org/

外部サイトを開く
VPN service

Proton VPN

Proton VPNは、Proton Mailなどプライバシー系サービスを長く運営しているProtonのVPNサービスです。

紹介する理由: VPNの信頼性を見るときに、対応端末、サーバー、透明性レポート、監査、オープンソースアプリなどを公式情報で確認しやすい実用候補として紹介します。

URL : https://protonvpn.com/

外部サイトを開く
VPN service

Mullvad VPN

Mullvad VPNは、メールアドレスやパスワードを要求しない番号アカウント方式を採るVPNサービスです。

紹介する理由: VPNを選ぶときに、登録情報を減らす設計、ログ方針、支払い方法、アプリ情報を公式サイトで確認できる候補として紹介します。

URL : https://mullvad.net/

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